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shadow man 草薙 碧の事

shadow man 草薙 碧の事

細く入り組んだ、だらだらとした坂道の突き当りに登録有形文化財に指定されている洋館がある

僕はスニーカーの鈍い靴音を鳴らしながら月に一度ここを訪れる

建物の門をくぐった時・・・

二階の窓のレースのカーテンから人影が見えた

僕が来る事を確認したかの様に・・・その影は消えた・・・

僕の視線を感じたのか・・・もしくは僕の幻視だったのか・・・窓のレースのカーテンは風にそよいでいるだけの様にも見えた・・・




完全予約制のここは待ち時間がない

時計が14時を差したと同時に扉が開いた

宮園君いらっしゃいと声がかかった

部屋に入ると独特の匂いが僕を包む

それは香りというにはほど遠いが嫌いな匂いではない

「どう、調子は?」

はい、時々不安が募り頭を抱える時がありますがそれは何とか頓服薬で紛らわせる事ができます

それよりも今一番辛い事は眠った時に悪夢を見る事です

ふと目が覚めると寝汗で服がびっしょりと・・・体が硬直しています

眠る事がとても怖いんです

子供の様で変ですか、草薙先生?




僕は笑われると思った

悪夢が怖いって・・・たぶん理解できないだろうと思っていた

でも先生は真剣な顔をして暫く考え込んでいた

その間、僕はとても不安になった

額から嫌な汗が流れたと同時に先生が口を開いた




「宮園君、少し数十問、質問をします」

「質問から思い付いた事やイメージをそのまま答えて下さい」

「質問内容で気分が悪くなったら言ってくださいね」

僕はどんな質問が投げかけられるのか更に不安が募った

「質問を始めますね」

はい・・・




「桜の花びらが眼球に張り付いた」

先生!?なんて答えればいいんですか??

「思いついたイメージを率直に答えてくれればいいのよ」

はい・・・花びらには・・・細い血管が走っている事に初めて気づいた

「その調子よ」

「お菓子の袋に手を入れたら袋の中で手を握り返された」

生暖かさだけが伝わった

「電球の中に金魚が囚われていた」

電球を凍らせ時を止まらせる

「携帯で電話をしたら自分に繋がった」

デジャブの中のホントの自分

「指先に針を刺したが痛みはなかった」

僕の左手は死んでいるから

「寝ていると一匹の蟻が耳の中に入って来た」

蟻と交信ができる様になった

「泥沼の中にコスモスが一輪咲いていた」

枯葉剤を一滴泥沼に垂らす

「先生は実はただの人形だった」

先生を分解します

「影の中に影を見た」

それが本当の自分

「悪夢の味は」

甘く熟しすぎたザクロ











「先生・・・眩暈が・・・」

顔が真っ青・・・ベットで少し休んで

この薬を飲むと落ち着くから・・・今、水を持ってくるわね




ふと目が覚めたら外は夕暮れだった

慌てて時計を見ると一時間近く寝ていた

夢を見ないで深い眠りにつく事がこんなに気持ちがいいものだと改めて知った

きっと草薙先生が傍にいてくれたから・・・

ふと、さっきの質問の事が頭をよぎった

草薙先生が人形だったら本当は・・・

少し眩暈がした

それからは草薙先生に話し掛けられてもしどろもどろになって言葉が出なくなった

そして草薙精神科病院を後にした




shadow man 草薙 碧の事




質問で催眠状態にして更に薬で深い心の奥をみ見てみた・・・

この子は彼の餌にもってこいの心理状態にある事は分かった・・・

けど彼は寄生していないようね

彼が実在している事に確信を持っているけど、そうたやすくは見つからないわね

彼は幽霊でもないし神でもないし悪魔でもない

もっと純粋で強かな存在

とても、とても興味深い存在

彼に蝕ばられてゆく子を私は高校の時に見ている

蝕ばられてゆく人間はとても美しかった

もう一度、それを見て観察したい

ここに来る患者達は恰好の餌になるのだから

そして彼を私に寄生させ蝕ばられてゆく自分の姿を観察したいのだから

私の心の闇は深くて残酷

きっと彼は気付いてくれるはず・・・

彼・・・shadow manはきっと・・・私に・・・






つづく・・・






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