fc2ブログ
 

不死議堂 2 ・・・終末は永遠の愛

不死議堂 2 ・・・終末は永遠の愛

私は疲れていた

仕事と私生活において

いつも何かに追われている





そして疲れ果てたある日、仕事を休む事にした

理由は親類に不幸があり、と上司に告げた

体調が悪いと告げると後々面倒になりそうだからだ

職場内では真面目で通っているが、本当の私はそういう人間なのだ

誰も知らないだけなのだ





そして職場とは真逆な電車に乗った

いつもと違う方向に向かっている車内に混雑という言葉は当てはまらなかった

車窓から流れる風景をボーッと見ていた

少しすると景色が変わるのに気付いた

何となく私の育った匂いのする風景になったのだ

そして私は次の停車駅で降りた

ネクタイをカバンの中におさめシャツのボタンを一つ外した

少し歩くと人がすれ違うのもやっとなアーケード街がありフラフラとさ迷い込んだ

そこはまるで私の育った時代がそのまま残っていた

肉屋がコロッケを揚げてラードの匂いが漂う

私はその揚げたてのコロッケを一つ買いアーケード街を散策する




ふと視線を感じた

こんな所に勤め先の社員が居るわけはないとヒヤッとした

視線の先を辿ると小さな呉服屋のショーウィンドウに目がいった

そこには和服の人形が展示してあった

その人形は幼さと大人の狭間を行き交うような表情があり、私は恋をした

そんな事を人に言ったらそれこそ長期休暇をとれと言われるだろう




職場を休んだのはその一日だけだが、休日になるとそのアーケード街に行ききするようになり、その彼女を訪ねる事が日課となった

彼女の眼差しはその時々に色を変え私を虜にした

そんなある日、呉服屋の主人が私を気になったのか声をかけてきた

「この人形はある作家さんの作で一点物なの」

「あなたが週末にここに来て人形を見ているのは気付いていたわ」

「人形を手に取ってもいいわよ」

「この人形も喜ぶと思うわ」

私は、私は、衝動を抑え切れず、髪に触れ頬を指先でなぞり

そして愛に堕ちた




不死議堂 2 ・・・終末は永遠の愛



通勤の帰り道、車がすれ違うのも難しい坂道を登っている

街中だというのにこの急な坂道は一日の終わりにはこたえる

疲れがつのったのか坂道の途中で佇んだ

ふと横を見ると細い脇道がある事に気付く

もう何年もこの坂を上り下りしていたのに気付かなかった

急な坂道で佇んでいた私に車がクラクションを鳴らしその音が耳障りになりその脇道に入って行った

ウネウネと続くその脇道は私の思考を更に鈍らせた

そうこうすると、とある不思議な店に目が止まり、誘われるように店のドアを開け店内に入った

奥を凝視するとカウンターの奥に人影が見える

煙草の煙の中で真っ赤なマニキュアが妖艶に踊っている




その妖しげな老婆は私に向かいこう言った

「主の願いを叶えよう」

「さぁ、この薬を一滴残らず飲むがよい」

「主の愛は形になるじゃろう」

老婆の言葉に従い私は震える手で薬を飲んだ




呉服屋の主人が不死議堂を訪れたのは冬もあけ日差しに暖かさを感じる頃だった

「不死議堂さん、掘り出し物はあるかい」

「あっ!この男の子の人形にウチの着物の切れ端で作った着物を着せると様になるね」

「そしてウチの女の子の人形の側に置いてあげよう」




「その男の子の人形も喜ぶじゃろう」

「何せ永遠の愛を手に入れたのじゃから」

と煙草の煙を吐きながら不死議堂の主人は素っ気なく言った






 にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へ
スポンサーサイト



Guide
  •  …この記事と同じカテゴリの前後記事へのページナビ
  •  …この記事の前後に投稿された記事へのページナビ
 

~ Comment ~

>矮星さん

矢張り矮星さんなら八百比丘尼と結びつけましたか^^
坂道というと後は黄泉比良坂はですよね^^
浅知恵ですが、それらをイメージしてイメージを膨らませました。

それにしてもこの老婆は意地悪な存在だと改めて思います(苦笑
矮星さんもこの様な坂道があったら無視してくださいねw
お酒が飲めなくなりますよ~( *´艸`)
  ※コメントの編集用
  シークレットコメントにする (管理者のみ表示)

MENU anime_down3.gif

同じカテゴリの記事が一覧表示されます
同じタグの記事が一覧表示されます
更新月別の記事が一覧表示されます
キーワードで記事を検索