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小さなキラキラしたもの 2「優しさのかけら」

小さなキラキラしたもの 2「優しさのかけら」

開店当時の佃田商店街は人通りが絶えず、ごった返していた

昭和の匂いがする商店街だったのだ

しかし大型ショッピングモールが出来てからの商店街はシャッターを閉める店が多くなり、今ではゴーストタウンのような景色になっている

その風景がいいのか、たまに写真を撮り歩く輩がちらほら見える

まったくと舌打ちをした





「もう潮時かもな」

客にではなく、自分に珈琲を淹れた

誰もいないカウンターで珈琲を一口飲み睡魔に負けた





そして俺は夢を見た

小さな天使が珈琲カップのソーサーに腰掛けていた

その天使は小さなキラキラしたものを俺に差し出した

俺は掌を差し出すと小さなキラキラしたものを掌の中央に置き天使は姿を消し、俺は目覚めた





とうとう今日で店を閉める

アンティークのカップ達が悲しげに俺を見つめていた

そこに一人の馴染みのばあさんが訪れた

「今日で終わってしまうんだね」

「ここはね、私達老人の数少ない井戸端会議ができる憩いの場だったんだよ」

「安くて不味い珈琲をいつもありがとよ」

といい老婆は出て行き最後の客となった

灯りを落し静けさの中、珈琲カップ達は何か言いたげだったが、その言葉は俺にはわからなかった





それから二年後・・・





俺は軽トラで移動式カフェなるものをやり始めた

移動しながら珈琲を出しているのだ

決まった時間に決まった場所で車を止め珈琲を淹れている

軽トラの周りは老人達の噂話やら嫁の悪口やらで騒がしい

足が不自由な老人達もこれなら気軽に肥やしにもならない話の輪に入れる

しかし、これはかなりの重労働だ

夏と冬は特にだ

それにほとんどボランティアのような収入しか入らない





そんなある夏の日・・・

俺は軽トラで珈琲を出しているさなか倒れてしまった

そして夢を見た

あの小さい天使が現れた

「お前に小さなひとかけらの優しさを預けたのは俺の正解だったな」

「なんだそれ!・・・俺はな~!!」

と言いかけたところで天使は煙草を吸い始め煙を吹きかけてきた

「お前!!」

その瞬間、天使はニヤッとして飛び立った

そして目が覚めた




小さなキラキラしたもの 2「優しさのかけら」






何日間、気を失っていたのだろう

看護師が慌てて駆けつけた

首を持ち上げ周りを見渡すと病室にすし詰め状態の老人達が歓喜の奇声を上げた

そしてあの時の最後の客だった老婆が一言呟いた

「またお前の安くて不味い珈琲を飲ませておくれ」





俺は苦笑した






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