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あの時の忘れ物

あの時の忘れ物

私が古民家カフェを始めて五回目の夏が来る

開店当初は珍しさもあって客は途絶えなかったが時間が経つにつれ人足が遠のいた

それでも何とか今までやり通している

それには理由がある・・・。

3回目の夏が来たある日・・・





空の雲行きがあやしくなり客が足早に店を出た

最近は夕方近くになると激しい雷雨がやってくるからだ

店内がガランとしたと同時に雨が降り出した

今日はこれで終わりのようなものだ・・・一人で苦笑した

店内に流れている音楽の音量を少し上げた

そして音楽を聴いている時に扉が開く音がした

ドアの方向を見ると一人の女性がいた

体は雨で濡れいる

「雨に降られてしまいました」

その女性客ははにかんだ様にクスッと笑った

濡れた上着を脱ごうとしたのでハンガーを渡し壁に掛けるように勧めタオルも手渡した

音楽の音量を下げた

「あっ!ボリュームは大きいままでお願いします」

「私の好きな曲なんです」

それが彼女とのはじまりだった・・・





彼女はそれからもお店に訪れた

訪れる時はいつも雲行きがあやしく雨が降り出してから

そのこと自体も不思議ではあったが彼女自体も不思議なリズムのある人だった

でもその彼女とは話が合った

音楽の事、趣味の写真の事、珈琲の好みの事・・・色々・・・

そして誕生日の事に話が進み彼女の誕生日をその時知った

誕生日は夏が終わろうとし朝晩が過ごしやすくなる季節だった





今日は彼女の誕生日の日だ

また夕立が来そうだった・・・そして雨粒が強さを増す頃、彼女は来た

私は彼女にプレゼントを渡した

彼女はラッピングを開くとビックリしたと同時にとてもうれしそうな顔をしてくれた





彼女は相変わらず夕立が激しさを増す頃に訪れた

その時は必ず私のプレゼントを身に付けてきてくれた

だがもう夏も終わりかけているこの頃は夕立の回数も減り彼女が訪れる回数も減ってきた





今考えればその年の最後の夕立の日、彼女はいつものよう訪れた

たわいのない話をしたりお互いの好きな音楽を流して無言でそのリズムを聴いていたり・・・

そして雨も止み彼女が店を出て行った

ふと見ると彼女の座っていた席の隣の椅子に私がプレゼントした物が置き忘れていた

今から追いかけても間に合わないだろう

住んでいる所も分からないし連絡の付けようもない

そしてその年の夏は終わった

それが彼女との最後の日だった




次の年の夏・・・また夕立が来そうだ・・・

いつか・・・きっと・・・

その願いを叶えるため・・・




あの時の忘れ物






雨で髪を濡らさないようにと選んだ帽子は今も店内の夕日が当たる場所に置いてある






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~ Comment ~

>矮星さん

矮星さんのほろ苦い過去。素敵ですね^^
若い頃の出逢いはすれ違う時が多いように思います。
そういう過去を経験しながら人は成長していき素敵な大人になるのだと思います^^
もし矮星さんがその時の素敵な方に告白していたら今の矮星さんは・・・などと考えてしまいます( *´艸`)
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