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細い糸 2 さい‐かい〔‐クワイ〕【再会】

細い糸 2 さい‐かい〔‐クワイ〕【再会】

名前を決めるってことがこんなに大変だとは思わなかったよ

今日の朝、いつものベンチで考えていて思いついたんだ

こんな名前はどうかな・・・

「桜雪(さき)」

「うん」

と彼女は一言いい微笑んだ

そして彼女はキッチンの棚に並んだ三つのタンブラーに目を移した











秋が深まってきた

もう会社帰りは薄手のマフラーをしてもいいかもしれない

頬をかすめる秋の風は冬をそこまで連れてきている

空を仰ぐと空気が澄んで夜空が高く見え始める

星々もきらめき始めた

この夏のある日のことを少し思い出した

あの時・・・僕の気持ちは・・・

彼女の気持ちは・・・

それ以上は考えれれなかった

カバンから辞書を取り出す

うん‐めい【運命】

こんな力強いものではない

ひつぜん‐せい【必然性】

ぐうぜん‐せい【偶然性】

か細い糸で繋がっていたような・・・そんな感覚・・・

その糸が切れたのだなと思う





家につき一人分の鍋を作る

冷やしてあった安いワインのコルクを開けた

高いワインよりも安いワインが好きだったりする

安いワインの中には時に美味しいワインと巡り合う時がある

それが何となく好きで・・・巡り合わせとでもいうのか

そうか・・・辞書を開いた

めぐり‐あわせ〔‐あはせ〕【巡り合(わ)せ/巡り会(わ)せ】

この言葉に近いかもしれない・・・僕と彼女は・・・もしかしたら・・・





いつもの朝が訪れる

珈琲をドリップしてタンブラーに入れる

こうして朝が始動する

そして電車を降り公園に向かい、いつものベンチでタンブラーに入れた珈琲を飲むのが僕のリズムだ

タンブラーのガーベラの柄を見る

ガーベラの模様の印刷面の段差を人差し指で確かめる

コンマ数ミリという段差なのに指にその感触が伝わる

そして辞書をペラペラとめくり止まったページの単語を紐解く




もうあれから二年になる

朝、ベンチで珈琲を決まった時間に飲むのはもしかしたらという期待があるのかもしれない





春の桜が舞い落ち

梅雨が緑を深め

夏が木陰をつくり

秋の枯れ葉が舞い散った

そして季節は廻り、僕の好きな冬が訪れる





会社帰りに何となく朝座るベンチに腰掛けた

今夜は底冷えがする

それが何となく心地いい

手袋の上にポツンと白いものが舞い降りた

空を見上げると星の代わりに粉雪が舞い降りてきた

僕はベンチに浅く座り背もたれに首をゆだね、ゆらゆらと降ってくる粉雪を眺めていた

そして目を閉じた




もうそろそろ終電か・・・と目を閉じながら思った時

僕の前に人の気配がした

静かに目を開けると

ほどけていたか細い糸は結びつく





彼女が空を見上げて言った



細い糸 2 さい‐かい〔‐クワイ〕【再会】





「綺麗ね」

「あの時の星空のよう・・・」




「そうだね」

「でも今日の方があの時よりも、もっと綺麗だ」






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