fc2ブログ
 

優しさの方程式

優しさの方程式

私の幼い頃の夢は花屋さんだった

でも私は理数系が得意で美系のセンスは一つもなかった

両親は数字に対する才能を伸ばそうと大学も理数系だった

私の関与する隙は無かった





それでもあの時の抱いた夢を捨てきれず両親の反対を押しのけて大阪の中心のこの街に小さな花屋を開いた

夢は理想を夢見、自分を高揚させたが・・・

夢と現実は程遠く、実際花屋を開いてみれば売れ行きや色々な事で現実を見せられた

本当に夢を追い求めた事が正解だったのだろうか・・・

自分の才能を見極め本当は理数系の会社に就職し安定した暮らしをした方が幸せだったのか・・・

私は暇な時間それだけを考えていた

両親には申し訳ないという気持ちで一杯だった





ある日・・・その男はお店に現れた

身長が高く骨太で・・・しかし身に着けているものは粗末で無精ひげをはやしみすぼらしい姿だった

その男が私にこう言った

「この花とこの花とをメインで5000円程度のブーケを作ってくれ」と

私の一番苦手な作業だ

私はしどろもどろしながら花を束ねていくとその男は・・・

「この花を中央に置いてこの花は左に、そしてこうしたらいいんじゃない・・・」

と言ってきた





私は戸惑いながら男の指示に従い花を束ねブーケが完成した

男は満足そうに「いい出来だ」といいお金を払っていった

それから男は毎月第一金曜日に顔を見せるようになった

その都度、私に色々と注文し出来上がったブーケを見ては「いい出来だ」と言い店を出て行った

そうしている内に少し男のプライベートな事もわかってきた

男はセミプロのカメラマンだった・・・ブーケは撮影に使うらしい事も

生活は決して豊かではない

それでも夢を捨てきれない自分にあがいているという

私は思った・・・「この人は私に似ている」と・・・





そんな事が二年続いたある日、男はある月の第一金曜日にお店に訪れた

男はいつものように5000円程度で花をみつくろってくれと私に言ってきた

いつもと違うところは・・・花の指定をしてこない事・・・そしてある人にプレゼントをするブーケだという

私は戸惑いながらも今までの彼の好みやセンスを考えながらブーケを作った

男は・・・私の作ったブーケをしばらく眺め・・・「いい出来だ」とニコッと笑った

そして男はお金を払ってこう言った

「俺は東京の大手デザイン事務所の専属カメラマンとして契約を結び上京する」

「不安は一杯だけどこの機を逃したら俺は自分を否定する事になるかもしれない」

「だから・・・」

「君もがんばれ!!」

と言い、さっき私が作ったブーケを彼が私に手渡した






優しさの方程式







そして彼は振り向きもせずお店を後にした

私は涙が出るのを抑え・・・でも涙はこらえきれず頬を濡らした






にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へ
スポンサーサイト



Guide
  •  …この記事と同じカテゴリの前後記事へのページナビ
  •  …この記事の前後に投稿された記事へのページナビ
         
  【2021年04月】の更新記事一覧 →蛹 SA NA GI  蛹 SA NA GI
 

~ Comment ~

  ※コメントの編集用
  シークレットコメントにする (管理者のみ表示)

MENU anime_down3.gif

同じカテゴリの記事が一覧表示されます
同じタグの記事が一覧表示されます
更新月別の記事が一覧表示されます
キーワードで記事を検索